排水の規制値で何年も前からある一定の業界を悩ませている「亜鉛」の排水処理について書かせていただきます。
亜鉛という物質は様々な工程で使用されていますが、その中でも塗装やめっきなどは使用される頻度が高いです。
などですね。
亜鉛の排水規制値はもともと5mg/L以下とされていましたが、2006年(平成18年)に5mg/L以下⇒2mg/L以下へと改定されました。
ただ、廃水規制にすぐ対応できない業種(10業種)については、亜鉛規制値対策をするまでの期間暫定排水基準が設けられ、従来の5mg/L以下が適用となっていました。
この暫定排水基準は、2006年から更新され続け、現在、この基準の対象になっているのは、電気めっき業だけです。
めっき業以外は、きちんと正規の基準が適用されているのに、なぜめっき業だけ特別扱いされているの?と感じてしまいますが、事情もあるのかもしれませんね。
しかし、これまで暫定排水基準の期間が、4回延長(5年+5年+5年+3年)されてきましたが、この先はさすがに暫定排水基準の期間を延長することはないだろう、というのが大方の見方です。
亜鉛の処理方法
液中に溶け込んでいる亜鉛の一般的な処理は、凝集沈殿法で処理します。
排水⇒pH調整(pH9~10.5)⇒高分子凝集剤 添加⇒凝集沈殿
基本的には、この処理方法で亜鉛を除去(規制値以下)することができます。特別難しいことはないですが、例えば、凝集沈殿槽の滞留時間が短いと亜鉛の水酸化物がしっかりできなかったり、細かな水酸化物が流出してしまう可能性はあります。
リン酸亜鉛や溶融亜鉛は、この処理方法で簡単に処理することができます。
ただ、溶融亜鉛に関しては、亜鉛が処理しにくくなるケースもあります。それはフラックス工程から排出されるアンモニアですね。
このアンモニアが亜鉛を含んだ排水に混ざると、亜鉛の水酸化物ができにくくなります。
電気めっきの亜鉛は排水処理しにくい
主に処理しにくい電気亜鉛めっき排水は、合金めっきですね。例えば鉄と亜鉛、すずと亜鉛、ニッケルと亜鉛といったような2つの金属を同時に析出させる合金めっきの排水は処理しにくいです。
処理しにくくなる理由を簡単に説明すると、金属は種類によって析出(メッキされる)電位が違います。
電気めっきなので電気をかけた際、液中に2つの金属があったとしても電位差があるので、どちらかの金属が先に析出(めっき)し、同時にめっきされることはありせん。
合金めっきの場合、電位差のある金属を同時に析出(めっき)させるため、キレート剤を液に添加しています。
キレート剤というのは、液中で金属をイオンの状態で安定させて、析出電位を調整する役割を持っています。
この「金属をイオンの状態で安定させる」というのが厄介で、排水処理をしようとしても安定しているので水酸化物にならず、凝集沈殿を行うことができません。
硫化物処理しかないか
色々なメーカーから排水処理薬品が販売されていますが、主成分が硫化ソーダの薬品が多いように感じます。
確かに硫化ソーダは、金属水酸化物を作るには優秀な薬品ですが、臭いとガスの問題があり、あまり好んで使用される薬品ではありません。
メーカーから販売されている硫化ソーダ含有の薬品は、臭いを抑えるため工夫されているようで、硫化ソーダ自体よりも臭いは小さいですね。
(その分、高額ですが)
硫化ソーダ含有の薬品を購入するか、硫化ソーダ自体を使用するか、悩ましいところですね。
住宅街だと臭いの対策をした方が良いですが、ポツンと一軒家みたいな工場であれば、硫化ソーダ自体で処理してもいいかもしれないですね。
希釈処理でも良いか
「どうやっても亜鉛を処理できない」ということになれば、水で薄めるしかないですね。実際、すでに希釈して亜鉛の数値を落とし、流している会社もあるので、特別問題があるわけではないです。
ただ、希釈するため大量の水が必要になるため、水道水の場合は相当な水道料金になる可能性があります。
また地下水の場合は、くみ上げることのできる量が決まっていると思うので、不足する可能性もあります。
最終手段として、希釈処理はありだと思います。
亜鉛排水の処理薬品
亜鉛排水の処理薬品はたくさんありますが、ここでは処理しにくい亜鉛に効き目のあるだろう薬品をご紹介させていただきます。
日本ワコン
イオン交換でご存じの方がいるかもしれませんが、排水処理装置や薬品の販売も行っています。
日本ワコンが扱っている亜鉛処理薬品は、「メタスラDS」で合金めっき排水の処理も可能です。
薬品の注意事項の部分で
「pHを低くすると腐食性のガスが発生します」という記載があるため、硫化ソーダベースの薬品と想定されます。
検討する際は、安全性と臭いの確認も必要ですね。
日本表面化学
めっき薬品の製造メーカーです。めっき薬品の販売と合わせて亜鉛の処理薬品も販売しています。
亜鉛処理薬品の製品名は、「7F033」で亜鉛や銅の処理にてきしています。
この薬品も硫化ソーダベースで臭いに注意が必要です。
亜鉛の処理 まとめ
いずれにしても亜鉛の暫定排水基準値が適応されるのもあと一年ですから、なんらか対策を考えなければならないタイミングです。
薬品メーカーに相談するのか、排水処理メーカーに相談するのか、ですが、どちらにしても簡単に対応できる方法はありません。
以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。