建設現場や外構工事、さらにはDIYでも頻繁に使われるコンクリート。
施工後の洗浄や雨水によって排出されるコンクリートの排水は、一見ただの水のように見えますが、実は強いアルカリ性を示すことをご存じでしょうか?
pH10以上にもなるこの排水は、環境やインフラ、健康に対してさまざまなリスクをもたらします。
この記事では、なぜコンクリートの排水がアルカリ性になるのか、その化学的な仕組みと具体的な影響、そして適切な中和処理の方法について、分かりやすく解説していきます。
なぜコンクリートの排水はアルカリ性になるのか?
建設現場や外構の清掃などで流れる「コンクリートの排水」は、多くの場合pH10〜12の強アルカリ性を示します。
これは、コンクリートそのものが持つ化学的性質によるもので、環境への影響や対策の必要性が指摘されています。ここでは、その仕組みと影響について詳しく解説します。
コンクリートの主成分とアルカリ性の発生源
成分 | 働き | アルカリ性への関与 |
---|---|---|
セメント(水和反応) | 強固な結合材として硬化 | 水和により水酸化カルシウム(Ca(OH)₂)を生成 |
水酸化カルシウム | コンクリートのアルカリ性の主因 | 水に溶け出してpH11〜12の排水を発生 |
アルカリ金属酸化物(Na₂O、K₂O) | セメント中の微量成分 | 水と反応してNa⁺・K⁺イオンとなりpH上昇 |
水酸化カルシウムというのは別名、消石灰と言われており工場排水の処理に使用されたりしています。(pHを上げるために使用)
なぜ水に触れるとアルカリが流れ出すのか?
未硬化のコンクリートや、表層部が劣化したコンクリート表面に水が接触すると、アルカリ成分が溶出します。特に、水酸化カルシウムは水に溶けやすく、水が通ることでアルカリ排水として流出します。
この排水は一見透明でも、pHメーターで測定するとpH11以上の高アルカリを示すことが多く、魚類や微生物に有害です。
環境への影響と課題
コンクリートの排水がpH10〜12と強アルカリ性を示す理由は、水酸化カルシウムなどのアルカリ成分が溶出するためです。これを中和せずにそのまま公共排水や自然河川に流すと、以下のような問題が生じます。
- 環境基準の違反:排水のpHは5.8〜8.6(環境基本法)と定められており、これを超えると法令違反に
- 水生生物への影響:強アルカリ性の水は魚類・微生物に対して強い毒性を持つ
- インフラ設備の劣化:排水路や下水処理施設の腐食や詰まりの原因になる
これらを防ぐため、現場での中和処理は必須とされています。特に建築・外構工事では、施工時や清掃時に発生するアルカリ排水をそのまま流さないようにする必要があります。
対策:中和処理とpH管理
コンクリート排水を環境に流す前には、以下のような対策が有効です。
おすすめの中和処理装置(メーカー別)
メーカー | 製品名 | 方式 | 用途 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
栗田工業 | KURITA pH自動中和装置シリーズ | 薬注(酸注入)式 | ビル・工場の建設現場 | pHセンサー連動で自動制御、安全機能付き |
オルガノ株式会社 | アシッド・コントローラー | 希硫酸注入+撹拌タンク式 | 研究施設・水処理ライン | 高精度なpH制御、ろ過システムと連動可 |
三浦工業 | pH調整装置「ミウラバランス」 | pH計測+酸薬注制御 | 産業排水・ボイラー排水 | 処理量に応じたラインナップ、遠隔監視対応 |
日本濾水機工業 | エコ・ニュートラルシリーズ | 中和タンク式(無電源タイプあり) | 小規模建築・住宅外構 | 手動対応可、コストパフォーマンスに優れる |
マルミ工業 | 建設現場用 pH中和槽 | 簡易中和槽+石灰石ろ材 | 仮設現場・下地処理現場 | コンパクト設計でレンタル対応あり |
中和装置導入時のポイント
コンクリート排水のpH中和は、環境保護と法令遵守の両面から極めて重要です。特にビル建設や住宅造成、外構工事などでは、中和処理装置の導入を前提とした計画が求められています。メーカーの中には、レンタル対応や設置支援を行っている企業も多いため、現場の規模や期間に応じて最適なシステムを選びましょう。