RO(逆浸透)装置は、高い精度で不純物を除去し、純水や超純水を生成する非常に優れた水処理技術です。しかし、その一方で「RO濃縮水(ブライン)」と呼ばれる排水が大量に発生するという課題があります。
この濃縮水には、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分、塩類、有機物、微量の重金属などが高濃度で含まれており、そのまま廃棄する場合は環境への負荷や排水処理コストの増加につながります。
こうした背景から、近年ではRO濃縮水の再利用に対する関心が高まっており、特に工場や食品加工施設、農業分野などでの活用が進められています。
冷却水、洗浄用水、トイレ用水への転用や、再びRO装置にかけて水回収率を高める二段階処理など、用途に応じたさまざまな再利用方法が模索されています。
本記事では、RO濃縮水の基本的な性質や、再利用の代表的な手法、実際の活用事例、再利用におけるメリットとリスク、さらには装置導入に際してのポイントまでをわかりやすく解説します。水資源の有効活用と環境保全を両立させる新たな取り組みにご興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
RO濃縮水の再利用が注目される理由とは?
水資源の有効活用や排水規制の強化が進む中、RO(逆浸透)装置の運転で発生する「濃縮水(ブライン)」の再利用が注目を集めています。これまでは産業排水として処理・排出されていた濃縮水ですが、環境配慮型の施設運営やコスト削減を目的に、再利用する動きが加速しています。
本記事では、RO濃縮水の水質的特徴から、実際の再利用事例、注意点、必要コストまでを網羅的に解説。工場や商業施設での再資源化を検討している方、水処理の効率化に取り組む方にとって、実用的な情報をお届けします。
RO濃縮水の再利用方法と活用可能性
RO濃縮水とは?概要と水質の特徴
RO(逆浸透)膜を用いた水処理では、原水を加圧して半透膜を通過させ、純水と濃縮水(ブライン)に分離します。濃縮水には、膜で除去された塩分、硬度成分(Ca、Mg)、有機物、シリカ、重金属などが多く含まれており、水質は原水よりも導電率・濁度・TDS(全溶解固形物)が高いのが特徴です。
項目 | RO水(透過水) | RO濃縮水 |
---|---|---|
導電率 | 1~10 μS/cm | 数百~数千 μS/cm |
硬度 | ほぼ0 | 高濃度 |
TOC(有機炭素) | 極めて低い | 原水よりも高濃度 |
pH | 5.5〜7程度 | 原水に近い〜やや低下 |
RO濃縮水の再利用方法と具体的な事例
RO濃縮水は「再利用せず廃棄される」ことが多いですが、環境規制強化や水資源の有効活用の観点から、以下のような方法で再利用され始めています。
1. トイレ洗浄水への利用
- 事例:電子部品工場でRO濃縮水をトイレ洗浄用水として再利用し、上水道使用量を20%削減。
- 設備投資:配管分岐とポンプ設置で約30万円。
2. 工場冷却水・洗浄水として再利用
- 事例:金属加工工場で、非接触冷却水として利用。スケール防止剤と併用しコスト抑制。
- 課題:高硬度の影響でスケーリングリスクあり。前処理が必要。
3. 緑地灌水・植栽への活用
- 事例:物流センター敷地内の緑地帯への潅水に使用。散水量の70%を濃縮水で代替。
- 注意点:ナトリウム濃度が高すぎると塩害の懸念あり。
4. 二段RO処理による再生水化
- 事例:食品工場で、濃縮水を二段ROで処理し再度製造用水へ活用。
- 初期費用は高いが、排水量削減による下水料金の削減効果あり。
再利用における注意点
1. 水質変動と濃度管理
濃縮水は原水の質や運転条件により成分濃度が大きく変動するため、定期的な水質分析が必要です。導電率やTDSが急激に上がると設備腐食やスケーリングのリスクが高まります。
2. 生物処理への悪影響
濃縮水には消毒副生成物や有機物が残存する場合があり、下水処理やバイオ処理設備へ流すと微生物の活性が低下する恐れがあります。中和や希釈などの対策が必要です。
3. 配管・設備の腐食リスク
高濃度の塩分や硬度成分により、金属配管・熱交換器などが腐食しやすくなります。耐腐食性の素材(PVC・ステンレス316Lなど)の使用が推奨されます。
再利用にかかるコストの目安
再利用方法 | 初期コスト | ランニングコスト | 備考 |
---|---|---|---|
トイレ洗浄 | 約30万~50万円 | ポンプ電力・配管清掃 | 水道料金削減効果あり |
冷却水利用 | 約50万~150万円 | 薬品費用・濃度管理 | スケール対策が重要 |
二段RO再処理 | 300万円~数千万円 | RO膜交換・高圧ポンプ | 高品質再生水を得られる |
まとめ
RO濃縮水はそのまま捨てるだけでなく、用途を選べばコスト削減・排水量抑制・環境貢献にもつながる有効資源です。ただし、成分濃度が高いため、再利用の際には水質管理・設備選定・処理コストに注意が必要です。施設の用途と再利用目的に応じて、最適な活用方法を設計しましょう。