ろ過マイスター

液体のろ過、純水など、元フィルターメーカーの営業マンが情報を発信するブログ

塗料・インクのろ過とは?フィルター材・方式・トラブル対策を徹底解説

塗料やインクの製造・使用工程では、わずかな異物混入が重大なトラブルにつながることがあります。例えば、印刷機のノズル詰まりや塗装面のムラ、機器の故障などは、生産の効率や製品の品質に直接影響を及ぼします。

これを防ぐために欠かせない工程が「ろ過」です。ろ過は、微細な粒子やゲル、固形物を除去し、安定した材料供給と高品質な仕上がりを実現するための要です。

本記事では、塗料・インクろ過の目的や使用されるフィルター材、ろ過方式、トラブル対策までを詳しく解説します。

■この記事を書いた人■
元水処理・フィルターメーカーの営業マン。15年間の勤務経験を活かし、ろ過や水処理について情報を発信中。現在は、フリーで工場のろ過、水処理のコンサルタントを行っている。一男一女の父。46歳。

塗料・インクろ過の目的

  • 異物混入の除去(ゲル、凝集物、粉塵など)
  • ノズルや印刷ヘッドの詰まり防止
  • 表面仕上げの均一性確保
  • 生産設備の保護とメンテナンス性向上

ろ過対象となる代表的な塗料・インク

  • 水性塗料・油性塗料
  • UVインク・溶剤系インク
  • フレキソ・グラビア印刷インク
  • 顔料インク(Pigment)・染料インク(Dye)

ろ過で使用されるフィルター材の種類

フィルター材 特徴 適用用途
ポリエステル(PET) 機械的強度が高く耐熱性も良好 水性・油性塗料、インク共通
ポリプロピレン(PP) 化学的安定性があり安価 水性塗料・弱溶剤系インク
ナイロン(Nylon 66) 耐摩耗性に優れ微細異物にも対応 高粘度塗料・顔料インク
PTFE(テフロン) 耐薬品性抜群で溶剤系に最適 UV・溶剤インク、高機能塗料
金属メッシュ(ステンレスなど) 再利用可能、強度と耐久性に優れる 高粘度塗料、大流量処理

材質選定のポイント

  • インク・塗料の粘度や粒径に応じたろ過精度
  • 使用する溶剤・薬品に対する耐性
  • フィルターの目詰まりしにくさ(耐ゲル性)
  • 清掃や交換のしやすさ(ランニングコスト

ろ過方式の主な種類

バッグフィルター方式

大容量処理に向いており、プレフィルターとしても使用されます。コストを抑えながら効率的なろ過が可能です。

カートリッジフィルター方式

微細な粒子やゲルの除去に最適で、フィルターの精度は0.5μm~10μm程度まで幅広く選べます。

スクリーンフィルター(メッシュタイプ)

繰り返し洗浄して使用できるため、環境負荷が低く、コストパフォーマンスにも優れます。

インクろ過における注意点

顔料の粒径管理

顔料インクは粒子径が大きく、ろ過精度を高くすると目詰まりが起きやすくなります。適切なプレフィルターとの併用が重要です。

ゲル・凝集物の除去

長期保管や高温条件下で発生するゲルはろ過の障害になります。温調管理や撹拌装置との併用が効果的です。

ろ過トラブルとその対策

  • ノズル詰まり: ろ過精度が粗すぎる。カートリッジの目開きを見直す。
  • 圧損の増加: フィルター目詰まり。交換サイクルを短くするか、プレフィルターを追加。
  • 濾過材からの溶出: 溶剤との相性が悪い材質を使用。PTFEなど耐薬品性素材に変更。

まとめ:塗料・インクろ過で品質と安定性を両立

塗料やインクのろ過は、見た目の仕上がりや機器トラブルの防止だけでなく、生産ラインの安定稼働にも直結する重要な工程です。使用する液体の種類や粘度、薬品性に合わせて、最適なろ過材・方式を選定することが成功のカギとなります。今後はより精密で環境にやさしいろ過ソリューションが求められる時代へと進んでいくでしょう。

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