今日は地下水(井戸水)のろ過について書こうと思います。
地下水は、水道と違い費用がかからないため、地下水を工場で使用されるケースが多いですね。実際、私のところにも地下水のろ過について相談がよくあります。
地下水を工場で利用する際の心配事項としては「この水で製品を作って大丈夫なのか」ということですよね。
地下水は地域により水質が異なるため、注意が必要です。最終的には、その地下水を分析して使用の可否を決めることになりますが、分析するまでもなく使用不可の判断ができる場合もあります。
今回は、地下水の見極め方と処理方法について解説させていただきます。
危険な地下水は?
地下水の水質が地域により異なることは冒頭に書かせていただいた通りですが、これまでの実績から「こういう地域の地下水は使えない」という傾向があります。
- 海岸の近くの地下水
- 滞留(流れの少ない)している河川の近くの地下水
- 温泉街の地下水
- 火山地帯の地下水
<海岸の近くの地下水>
これは単純に海水が混ざっている可能性が高いです。電気電導度やTDSを測ってみると分かりますが、一般的な地下水の電気電導度が100~200μS/㎝なのに対して、500μS/㎝以上になったりします。
工場内で使用するには、水道水レベルの水がほしいわけですが、500μS/㎝だと水道水レベルまで処理をするのに相当な設備投資が必要になるため、こういう場合は黙って水道水を使用した方が良いですね。
<滞留(流れの少ないしている河川の近くの地下水>
地下水は近くの河川の影響を受けます。近くに流れの少ない河川があると、その河川の水が地下水になっている可能性が高いです。
水は滞留していると有機物が繁殖し汚れます。電気電導度やTDSでは、有機物を測定できないため、仮に電気電導度の数値が低かったとしても有機物が多いと工場でその地下水は使用できません。
有機物を測定する方法はTOC分析で分析会社に依頼する必要があります。
<温泉街の地下水>
温泉街の地下水は、温泉成分が混入しているので、使用できないケースが多いです。鉄やマンガンの溶け込み量も多いため、くみ上げた段階で茶色い地下水の可能性がありますね。これを処理するためには、除鉄・除マンガン処理が必要でかなり大掛かりな設備になります。
電気電導度で言うと1,000μS/㎝近くになることもあり、この場合も水道水を使用した方が良いですね。
<火山地帯の地下水>
火山地帯の地下水は、シリカが多く含まれます。シリカが多く溶け込んだ水を工場で使用すると白いシミやカスが付着したようになります。
特に部品の洗浄などで使用すると外観を損なうため、処理が必要です。
地下水(井戸水)のろ過方法
上記で使用を避けた方が良い地下水の説明をさせていただきましたが、使用できるかどうかの目安は
と言った感じです。TOCは業者に分析を出す必要があるため、とりあえずは電気電導度かTDSで判断すればよいです。この基準値以上の地下水の場合は、ろ過ではなく根本的な水処理が必要になります。
<糸巻きカートリッジによるろ過>
地下水の汚れは、土や泥、酸化された鉄などですから、一般的なフィルターカートリッジもしくはバッグフィルターのろ過で良いです。
「何ミクロンのフィルターを使用すればよいか?」という質問をよく受けますが、正直、何ミクロンでも良いと思います。
というのも、ここで使用するフィルターは公称精度の糸巻きカートリッジが良いと考えていているので、何ミクロンを使用しても実際のろ過精度はそこまで変わらないと考えています。
ただ、何らかの目安がほしいということもあると思いますので、おすすめは10~50ミクロンの糸巻きカートリッジです。
迷ったら10ミクロンを使用しておいてください。
<糸巻き+活性炭カートリッジによるろ過>
糸巻きカートリッジ+活性炭カートリッジというパターンも良いかとは思います。
活性炭カートリッジの目的は、有機物の除去ですが、どの程度効き目があるかは何ともいえません。というのも活性炭カートリッジに充填されている活性炭の量は少ないので、もしかしたらすぐに許容量を超えてしまい有機物を吸着できなくなる可能性があるからです。
地下水(井戸水)のろ過 まとめ
手順としては
ですね。まずはろ過して使用できる水なのかどうか、電気電導度かTDSを測ってみてください。
ちなみにTDS計は、Amazonなどで2,000円も出せば購入できます。
以上