商社の営業マンからフィルターカートリッジやハウジングの選定について、相談を受けることがよくあります。確かにフィルターカートリッジやハウジングの選定は、考えなければならないことが多く、頭を悩ますのも分からないでもないです。
- 流体は何か?(水か薬品か)
- ポンプの圧力はどの程度か?
- ろ過したい粒子のサイズは?
水のろ過であれば選定は簡単ですが、薬品のろ過となると難しいです。というのもハウジングやフィルターカートリッジの耐性を考える必要があり、いくら考えても「実際にやってみないと分からない」こともよくあるからです。
今回はハウジングとフィルターカートリッジの選定について、詳しく解説させていただきます。
フィルターカートリッジの選定 ポイント
<必要流量は?>
単純にろ過と言っても考えることが多すぎますよね。そこでここでは、ろ過の考え方をお伝えします。
ろ過する流体
水、溶剤、油、酸、アルカリなど、ろ過する流体は様々です。 フィルターカートリッジやハウジングを選定する際、その流体に耐性のあるものを選定 する必要があります。
<水>
材質は何でもよい。
<溶剤>
カートリッジの材質は、コットンやナイロンがオススメ。ポリプロピレンは持たない 可能性が高い。ハウジングについては、ステンレス製+パッキンNBRもしくはPTFE。
<油>
基本的にはコットンが良いが、ポリプロピレンでも問題ないケースが多い。 ハウジングは、ステンレス製+パッキンNBR。
<酸>
pH値によるが、弱酸レベルであれば、ほとんどのカートリッジが使用できる。無難な ところでは、ポリプロピレン製。
コットンやナイロンは、避けた方が良い。 ハウジングも樹脂製でもステンレス製でも使用可。
パッキンはEPDM。 強酸の場合、特にクロム酸のような酸化力の強い酸には、耐性のあるカートリッジ材質 はない。
ポリプロピレン製を選定し、早めの交換を推奨する。 また、ハウジングは金属製は使用できないため、樹脂製を選定する。基本的にはフッ素系 樹脂のPVDFにパッキンFKM。
<アルカリ>
アルカリ性は、ポリプロピレン製で使用可能。問題は、ハウジングの選定。樹脂製ハウジングを強アルカリに使用するとクラック発生の可能性があるため、ステンレスハウジングを 選定する。
パッキンはEPDM。 ただし、何を選定してもアルカリ性の液は、浸透性が強く液漏れしやすいため、液漏れしてもよい 準備を整えておく。
ポンプ圧力とハウジング
ポンプ圧力に耐えうるハウジングを選定する必要がある。 ポンプ圧力の確認方法は、全揚程で考える。 例:全揚程25m⇒締切圧力0.25Mpa
高圧力のポンプの場合、樹脂製のハウジングではなくステンレス製のハウジングを選定
するのが良い。またステンレスハウジングでも蓋とシリンダーの固定が、クランプ式ではなく、ボルト式が良。
注意点としては、ウォーターハンマー現象が起きないように気を付ける。
特にハウジングの後段に電磁弁の取付は不可。ウォーターハンマーでハウジングの破損が考えられる。ハウジングの後段で自動バルブを設置したい場合は、モーターバルブを使用して、ゆっくり開閉を行う。
ろ過したい粒子のサイズ
1,000μm=1mm 100μm=0.1mm 10μm=0.01mm 1μm=0.001mm
ろ過したい液中に、どのサイズの粒子が混入しているのか、本来であればパーティクル カウンターで調査する。
パーティクルカウンターがない場合は、レンタルもできる。
http:// https://www.rex-rental.jp/large/050/middle/040
基本的に目に見えるようなサイズの粒子の多い液体では、フィルターカートリッジは
すぐに目詰まりしてしまうため、バッグフィルターなどの荒ろ過が必要。
※カートリッジタイプほどのろ過精度はないですが、荒ろ過としては十分。洗って再利用も可能。
ろ過精度の考え方
粒子の補足率はカートリッジの性能で決まる。
カートリッジのろ過精度には
- 公称精度:カートリッジメーカーの基準で決まる。
- 絶対精度:カートリッジで表示している粒子をほとんど補足する。(メンブレン)
絶対精度は分かりやすいですが、公称精度はニュアンスが分かりにくい部分があるので、補足します。
(例)
価格帯200~1,000円 公称精度1μm (糸巻きタイプ、積層タイプ、デプスタイプ)
補足率 粒子径1μ 30% 粒子径5μ 40% 粒子径10μ 60%
価格帯1,000~2,000円 公称精度1μm (糸巻きタイプ、積層タイプ、デプスタイプ)
補足率 粒子径1μ 40% 粒子径5μ 50% 粒子径10μ 60%
価格帯2,000~5,000円 公称精度1μm (積層タイプ、プリーツタイプ)
補足率 粒子径1μ 90% 粒子径5μ 95% 粒子径10μ 99%
価格帯10,000円以上 絶対精度0.2μm
補足率 粒子径1μ 99.90%
流量の考え方
ハウジングやフィルターカートリッジを選定する際、流量は最重要事項。
ハウジング選定時の流量の考え方
ハウジング毎に圧力損失が決まっており、正確にはメーカーで発行されている試験データをもとに圧力を考えハウジングのサイズを決める。
ただ、簡易的であれば、配管口径で考えても良い。
<配管口径 (0.2Mpa時)目安>
- 20A 40L/min
- 25A 63L/min
- 30A 90L/min
- 40A 160L/min
- 50A 250L/min
フィルターカートリッジの流量特性
糸巻き、積層タイプ
プリーツタイプ
メンブレンタイプ
- 10~40L/min(250mmのカートリッジ)
- 10~20L/min(250mmのカートリッジ)
- 5~20L/min(250mmのカートリッジ)
※選定例
流体:水(洗浄水) 粒子:加工時の切れ端、ホコリなど 配管口径:40A ポンプ圧力:0.3Mpa 必要流量:130L/min
ハウジング材SUS製
配管口径:40A カートリッジ本数:5~10本/250mm
ハウジングとフィルターカートリッジの選定 まとめ
一通りご説明させていただきましたが、いざ選定するとなると分からない部分も多いですよね。
考えなければいけないことを簡単に言うと
- ハウジングとフィルターカートリッジの耐薬品性
- ろ過流量
- ろ過精度
の3つです。
もしご不明点がございましたら、ぜひ、コメント欄に質問してください。分かる範囲でご回答させていただきます。
以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。