少し前までは、純水装置と言えば「イオン交換樹脂」か「逆浸透膜(RO)」かどちらかという感じでしたが、 十数年前から電気再生式(EDI)の純水装置という話をよく聞くようになりました。
純水装置を扱っている方なら名前くらいは、聞いたことあるかもしれませんが
- 再生薬品(塩酸、苛性ソーダ)を使用しない
- 連続運転ができる
- 処理水質が良い
ど、説明だけ聞けば非常に優秀な装置と感じます。これだけメリットがあるので一気に普及するだろうと思っていましたが、実際のところはなかなか増えていません。
今回は、このEDI式純水装置の説明とメリット・デメリットについて説明させていただきますので、これから純水装置をご検討の方は、ぜひ、最後まで読んでみてください。
EDI式純水装置のメリット・デメリット
EDI式純水装置のメリットは
- イオン交換樹脂の再生に薬品(塩酸、苛性ソーダ)を使用しない
- 再生と運転を常時繰り返しているので、連続運転が可能
- 処理水質が良い
特に薬品(塩酸、苛性ソーダ)を使用しないことは、純水を使用する工場にとって大きなメリットですね。
作業者の危険もないですし、ガスで工場内が腐食したり錆びることもないです。
(出典:EDI(電気再生)式純水製造装置 スーパーデサリナーSDシリーズ | オルガノ - Powered by イプロス)
ただ、当然ながらEDIにもデメリットはあります。
<原水の前処理が必要>
EDI式純水装置は、原水として市水や井水、工水をそのまま通水させることはできません。 理由は、原水中のカルシウムと炭酸が結合して炭酸カルシウムとなり、装置内のイオン 交換樹脂装置を固着させるからです。
EDIの前処理として、一般的なフローは原水⇒RO装置⇒脱炭酸塔⇒EDI
RO装置でカルシウム分を取り除き、脱炭酸塔で炭酸を取り除きます。
EDIの原水としての 目安電導度は、15μS/cm以下です。
これ以上になるとEDI後の処理水質を確保できない可能性があります。
<間欠運転には向かない>
EDIは、瞬時に運転と再生を繰り返します。間欠運転を行うと運転と再生のバランスが 崩れ、処理水質の悪化を招きます。
<スタック交換が高額>
EDI純水装置の中で、イオン交換樹脂が入っている部分をスタックと言い、EDIの肝となる部分です。
イオン交換樹脂の劣化や目詰まりにより、一定周期で交換する必要があります。 交換周期は、メーカーや原水の水質によって異なりますが、3~5年で交換費用は 50~100万円以上となります。
純水装置の比較
混床式 | EDI式 | |
---|---|---|
イニシャルコスト | ☆☆☆☆☆ | ☆☆☆ |
ランニングコスト | ☆☆☆☆☆ | ☆☆ |
処理水質 | ☆☆☆☆ | ☆☆☆☆☆ |
前処理の必要性 | 条件によりなし | 必ず必要 |
現場環境性 | ☆☆ | ☆☆☆☆☆ |
工場内の排気システムがあり薬品の使用が可能ならば、混床式純水装置の方が、処理水質も安定し、管理もしやすいです。
EDIは、薬品も使用せず、連続運転も可能ですから、理想的な装置と言えますが、原水水質の影響を受けるため、前処理の管理がしっかりできることが条件です。
EDIの前処理不足による不具合
- 処理水質の悪化(1μS/㎝以上)
- スタック内の目詰まりによる流量低下(最悪スタックの交換が必要)
一旦、バランスが崩れると再調整が必要なので、とにかく前処理の管理が何よりも重要です。
工場内で薬品を使用できないならEDIが良いですが、もし薬品の使用が可能 であれば、わざわざ管理の難しいEDIにする必要はないと考えます。
おすすめの純水装置は?
至って個人的な見解ですが、おすすめする純水装置は
- 混床式純水装置
- RO装置+カートリッジ純水器
- RO装置+EDI純水装置
の順番ですね。
混床式純水装置をおすすめする理由は、「設置スペースが小さい」「処理水質が安定している」「必要な電力量が小さい」「原水の水質変動に強い」です。
一方、デメリットとして大きいのは薬品を使用することです。
最近はSDGsであったりカーボンニュートラルの取組として電力量を減らす努力をしている企業が多いです。
その観点でも混床式純水装置がおすすめですね。