ろ過マイスター

液体のろ過、純水など、元フィルターメーカーの営業マンが情報を発信するブログ

【EDI式の純水装置はオススメ⁉】混床式とEDIの比較

純水装置と言えば、「イオン交換樹脂」か「逆浸透膜(RO)」かどちらかという感じですが、 十数年前からこの二強に挑むのが、電気再生式(EDI)の純水装置です。
純水装置を扱っている方なら名前くらいは、聞いたことあるかもしれませんが、再生薬品を使用しない、連続運転ができるど、説明だけ聞けば非常に優秀な装置と感じます。

今回は、このEDI式純水装置の説明とメリット・デメリットについて説明させていただきます。

■この記事を書いた人■
元フィルターメーカーの営業マン。15年間の勤務経験を活かし、ろ過や水処理について情報を発信中。現在は、フリーで工場のろ過、水処理のコンサルタントを行っている。

EDI式純水装置のメリット・デメリット

EDI式純水装置のメリットは

  • イオン交換樹脂の再生に薬品(塩酸、苛性ソーダ)を使用しない
  • 再生と運転を常時繰り返しているので、連続運転が可能

特に薬品(塩酸、苛性ソーダ)を使用しないことは、工場にとって大きなメリットですね。
作業者の危険もないですし、ガスで工場内が錆びることもないです。

(出典:EDI(電気再生)式純水製造装置 スーパーデサリナーSDシリーズ | オルガノ - Powered by イプロス
ただ、当然ながらEDIにもデメリットはあります。
<原水の前処理が必要>

EDI純水装置の原水として、市水や井水、工水をそのまま通水させることはできません。 理由は、原水中のカルシウムと炭酸が結合して炭酸カルシウムとなり、装置内のイオン 交換樹脂装置を固着させるからです。
EDIの前処理として、一般的なフローは原水⇒RO装置⇒脱炭酸塔⇒EDI

RO装置でカルシウム分を取り除き、脱炭酸塔で炭酸を取り除きます。EDIの原水としての 目安電導度は、15μS/cm以下です。これ以上になるとEDI後の処理水質を確保できない可能性があります。

<間欠運転には向かない>

EDIは、瞬時に運転と再生を繰り返します。間欠運転を行うと運転と再生のバランスが 崩れ、処理水質の悪化を招きます。

<スタック交換が高額>

EDI純水装置の中で、イオン交換樹脂が入っている部分をスタックと言い、EDIの肝となる 部分です。イオン交換樹脂の劣化や間詰まりにより、一定周期で交換する必要があります。 交換周期は、メーカーや原水の水質によって異なりますが、3~5年で交換費用は 50~100万円以上となります。

純水装置の比較

純水装置 混床式とEDI式の比較
  混床式 EDI式
イニシャルコスト ☆☆☆☆☆ ☆☆☆
ランニングコスト ☆☆☆☆☆ ☆☆
処理水質 ☆☆☆☆ ☆☆☆☆☆
前処理の必要性 条件によりなし 必ず必要
現場環境性 ☆☆ ☆☆☆☆☆

工場内で薬品の使用が可能ならば、混床式純水装置の方が、処理水質も安定し、管理も しやすいです。

EDIは、薬品も使用せず、連続運転も可能ですから、理想的な装置と言えますが、原水水質の影響を受けるため、前処理の管理がしっかりできることが条件です。

EDIの前処理不足による不具合

  • 処理水質の悪化(1μS/㎝以上)
  • スタック内の目詰まりによる流量低下

一旦、バランスが崩れると再調整が必要なので、とにかく前処理の管理が何よりも重要です。

工場内で薬品を使用できないならEDIが良いですが、もし薬品の使用が可能 であれば、わざわざ管理の難しいEDIにする必要はないと考えます。