ろ過マイスター

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【2025年度版 水道代の値上げは避けられない⁉】水道代が上がる理由5選

近年、電気・ガス料金の値上げが話題になることが多いですが、水道代も値上げの可能性があることをご存じでしょうか? 日本の水道料金は比較的安いと言われていますが、今後は値上げの動きが加速するかもしれません。

というのも水道水は、河川や湖、地下水などを元に造られますが、人が飲めるレベルまできれいにするためには、多くの処理が必要になります。また、よりおいしい水道水を供給するため処理工程も高度化しており、水道水の価格がこのまま上がらないとは考えにくい状況ですね。

ちなみに水道料金は、全国一律ではなく地域により異なります。理由は浄水場の処理工程に違いがあるからですね。その浄水場の処理工程の違いは、水道水のもとになる水がきれいかどうか。たとえば琵琶湖と木曽川ではそもそも水のきれいさが違います。琵琶湖の水は淀んでいるのに対し、木曽川の水は激流で水が透き通っています。

淀んだ水を飲めるレベルまで処理するには高度な処理が必要になり、つまりは処理コストが高額になるということですね。これが地域により水道料金の違う理由です。

本記事では、水道代の値上げの可能性について考察していますので、ぜひ、最後まで読んでみてください。

■この記事を書いた人■
元水処理・フィルターメーカーの営業マン。15年間の勤務経験を活かし、ろ過や水処理について情報を発信中。現在は、フリーで工場のろ過、水処理のコンサルタントを行っている。一男一女の父。46歳。

 

水道代が値上げされる主な理由

老朽化する水道管の修繕費用の増加

日本の水道管の多くは、高度経済成長期(1960~70年代)に整備されたものが使われ続けています。水道管の耐用年数は一般的に40年~50年程度と言われており、すでに多くの地域で老朽化が進んでいます。

実際に最近でも上下水道管の劣化による地盤沈下が問題になっています。

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これらの水道管を更新するためには膨大な費用が必要であり、なかなか更新工事が進んでいないのが実情です。

このインフラの整備費用が、水道料金の値上げにつながる可能性があります。

人口減少による水道事業の収益悪化

水道事業は基本的に「利用者の水道料金」で運営されています。しかし、日本は少子高齢化が進み、人口が減少しているため、水道の使用量も減少傾向にあります。また最近ではミネラルウォーターやウォーターサーバーを利用する方も増加しており、より水道使用量の現象に拍車をかけています。

使用量が減ると収益が減り、水道インフラの維持が難しくなるため、一人当たりの水道料金を上げざるを得なくなります。

気候変動と水資源の管理コスト増加

近年、異常気象や気候変動の影響で、降水量の変動が激しくなっています。

特に夏場の渇水や、大雨による水質の悪化などが問題になっています。これに対応するためには、新しい設備の導入や水資源の管理強化が必要となり、そのコストが水道料金に反映される可能性があります。

浄水場の高度処理化によるコスト増

近年、水質基準が厳しくなり、より高度な浄水処理が求められています。例えば、オゾン処理や膜ろ過などの高度浄水処理を導入するには、多額の設備投資と運用コストが必要になります。

この費用を賄うために、水道料金の引き上げが検討されることがあります。

<通常の浄水場の工程と役割>

工程 役割・目的 詳細内容
取水(しゅすい) 水を集める 川・湖・地下水などから原水(処理前の水)を取水する。異物を取り除くためのスクリーンを設置。
沈砂(ちんさ)池 砂や大きなゴミを取り除く 水の流れをゆるやかにし、砂や泥などの重いゴミを沈殿させる。
凝集(ぎょうしゅう) 小さな汚れをまとめる 凝集剤(PACや硫酸アルミニウム)を入れて微細な汚れを大きな塊(フロック)にする。
沈殿(ちんでん)池 フロックを沈める 大きくなった汚れの塊(フロック)を底に沈め、上澄みを次の工程へ送る。
ろ過(ろか) 微細な汚れを取り除く 砂や活性炭の層を通して、細かい汚れや微生物を取り除く。
消毒(しょうどく) 殺菌・消毒 塩素を加えて細菌やウイルスを殺菌し、安全な水にする。
配水(はいすい) 水道管へ送水 浄水された水を配水池に貯め、ポンプで各家庭や施設へ送る。

多くの浄水場では上記表の処理工程で水道水が造られていますが、水道水の元となる水が汚れている場合やもっとおいしい水道水を造ろうと考えた場合、下記の高度処理を追加することになります。

東京都の水道水は、すでに高度処理が導入されています。

浄水場の高度処理工程と役割

工程 役割・目的 詳細内容
オゾン処理 有機物の分解・消毒 オゾン(O₃)を注入し、水に含まれる有機物や異臭成分を分解し、殺菌効果を高める。
生物活性炭ろ過 残留有機物・臭いの除去 活性炭の表面に付着した微生物が、水に残った有機物を分解し、より安全でおいしい水にする。
膜ろ過(MF・UF・ROなど) 微細な不純物・ウイルス除去 細かいフィルター(膜)を使って、細菌やウイルスなどの微細な不純物を除去する。

民営化の影響

水道事業の民営化が進むと、コスト削減のために効率化が図られる一方で、利益を確保するために料金が上がる可能性も指摘されています。

すでに海外では、水道の民営化によって水道料金が大幅に値上がりした例もあります。

水道代の値上げ対策

水道代の値上げが避けられない場合、私たちができることは 節水と節約 です。以下のような対策を実践することで、負担を軽減できます。

  • 節水型の設備を導入する • 節水シャワーヘッドを使う(約30~50%の節水効果) 
  • 節水トイレに交換する(年間数千円の節約につながる)
  • 食器洗いのときは、節水コマを取り付ける
  • 生活習慣を見直す
  • 歯磨き時の水をこまめに止める
  • 洗濯はまとめ洗いをする
  • お風呂の残り湯を洗濯に利用する
  • 雨水や地下水を活用する

家庭用の雨水タンクを設置し、庭の水やりや掃除に使うことで、水道使用量を減らすことができます。また、地下水を利用できる地域では、井戸水を活用する方法もあります。

水道料金プランを確認する

自治体によっては、家族構成や利用目的によって水道料金の割引制度がある場合があります。一度、地元の水道局のホームページで確認してみましょう。

水道代の値上げは、水道管の老朽化・人口減少・気候変動・高度処理の導入・民営化 などの理由で今後も続く可能性があります。

しかし、私たちが日常生活で 節水の工夫をする ことで、負担を減らすことは可能です。 これからも安心して水道水を使うために、一人ひとりが水の大切さを意識し、賢く使うことが求められています。ぜひ今日からできる節水対策を試してみてください!

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