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工業用活性炭カートリッジの選び方を解説【6種類の活性炭フィルターの比較】

活性炭カートリッジは、水や液体から不純物、臭気、有機化合物などを効率よく吸着・除去するため、さまざまな産業分野で使用されています。特に工業用活性炭カートリッジは、ろ過精度や吸着力、使用用途に応じた特性が求められるため、製品選定に際しては比較検討が不可欠です。

本記事では、日本国内で流通している代表的な工業用活性炭カートリッジ製品をピックアップし、構造・素材・性能・用途の観点から徹底比較します。導入のヒントや選定の基準として、ぜひ参考にしてください。

■この記事を書いた人■
元水処理・フィルターメーカーの営業マン。15年間の勤務経験を活かし、ろ過や水処理について情報を発信中。現在は、フリーで工場のろ過、水処理のコンサルタントを行っている。一男一女の父。46歳。

 

活性炭カートリッジの基本構造と吸着メカニズム

活性炭とは、多孔質構造を持つ炭素材料で、表面積が非常に広いため、液体や気体中の不純物を物理吸着または化学吸着する力に優れています。工業用フィルターとして用いられる際には、活性炭を成型・充填・加工したカートリッジ構造にして、濾過装置や配管ラインに組み込むことが一般的です。

吸着の対象は、残留塩素、揮発性有機化合物(VOC)、臭気成分、農薬、色素などであり、飲料・食品・化粧品・医薬品の製造、水処理、精密洗浄などの用途で多く使われています。

製品ごとの特徴比較

工業用活性炭カートリッジ製品比較表

製品名 活性炭素材 ろ過精度 主な用途 特長
ロキテクノ MCKシリーズ 繊維状活性炭+ヤシ殻活性炭 5~10μm 一般工業水・純水前処理・清涼飲料水 耐久性が高く寿命が長い
ゼット工業 ZAC-SZS ヤシ殻活性炭 5~25μm 工業用水・食品用・残留塩素除去 ヤシ殻由来で高い吸着力
日本ポール カーボニートフィルター 圧縮成型活性炭 1~10μm 飲料・食品・純水製造前処理 圧縮活性炭による高精度除去
セントラルフィルター ステムフィルター 成型固化炭(多孔質) ~5μm 不純物吸着と脱臭向け 脱臭性が高く液だれしにくい
ダイワボウ 活性炭フィルター FMHシリーズ ヤシ殻活性炭 ~10μm 食品加工・業務用浄水 コスパ重視で扱いやすい
JNC ステムフィルター 圧縮成型炭+PPハウジング 5μm 精密機器用水・洗浄工程 活性炭量が多く吸着容量が大きい

ロキテクノ MCKシリーズとは?高純度精製を支える高性能活性炭フィルター

ロキテクノが開発する「MCKシリーズ」は、高性能な活性炭フィルターであり、特にアルカリ水溶液中に含まれる微量の金属不純物除去に優れた製品群です。

化学工業や電子材料分野、半導体製造など高純度な薬液処理が求められる場面で広く使用されています。

活性炭には、繊維状活性炭とヤシ殻由来の粒状活性炭を用途に応じて採用しており、金属イオンだけでなくケイ酸化合物や炭酸根などの無機不純物の除去にも対応しています。

このMCKシリーズの最大の特長は、その高い除去性能です。銅やニッケルといった微量の金属イオンを3ppb以下、条件次第では0.1ppb以下にまで除去可能とされており、精密な管理が要求される製造プロセスにとって理想的なろ過性能を備えています。

また、アルカリ水溶液に対して幅広く対応しており、0.01〜50 wt%という濃度レンジで使用可能なため、濃度変動の大きいプロセスにおいても安定した処理が可能です。

MCKシリーズは基本的にカートリッジ式またはカラム充填式として提供され、用途に応じてビーズ状または繊維状の活性炭構造を選択できます。たとえば、繊維状活性炭は表面積が非常に広く、瞬時の吸着性能が求められる場面に向いており、逆にビーズ状の活性炭は長時間の接触が可能で、じっくりと不純物を取り除く用途に適しています。

このシリーズは、主に以下のような分野で活用されています。

  • 半導体製造における高純度アルカリ水の精製
  • 液晶ディスプレイなどの電子部品製造工程
  • 化学工業における高濃度アルカリ薬液のリユース・不純物除去

導入にあたっては、活性炭の前処理として6.5N硝酸による洗浄が推奨されており、これにより初期の金属イオン溶出を最小限に抑えることができます。また、使用時の流速・温度・接触時間などのプロセス条件に最適化された設計を行うことで、フィルター性能を最大限に引き出すことが可能です。さらに、一定期間ごとのメンテナンスや交換を行うことで長期的な安定稼働が期待できます。

まとめると、ロキテクノのMCKシリーズは、業界でもトップレベルの金属不純物除去能力を誇り、高純度化を求める現場での信頼性を確保する重要な要素です。電子材料・化学・半導体分野における品質向上、製品歩留まりの向上に寄与し、効率的かつ経済的なろ過ソリューションを提供しています。

ゼット工業 ZAC-SZS:高性能活性炭カートリッジフィルターの特長と用途

ゼット工業株式会社が提供する「ZAC-SZS」は、高性能なヤシ殻活性炭を使用したカートリッジタイプのフィルターです。この製品は、各種工業用水の脱色・脱臭、水中の塩素・有機物の除去に優れた性能を発揮します。特に、残留塩素、トリハロメタン、農薬などの除去や脱色精製に効果的です。

主な特長

  • 高性能ヤシ殻活性炭の使用:高品質なヤシ殻活性炭を採用し、優れた吸着性能を実現しています。
  • 脱色・脱臭効果:水中の色や臭いを効果的に除去し、水質を改善します。
  • 有機物の除去:残留塩素、トリハロメタン、農薬などの有機物を効率的に除去します。
  • 活性炭の漏れ防止構造:端面はパッキンでシールされており、活性炭カートリッジフィルターからの活性炭の漏れは生じません。

用途

  • 各種工業用水の処理:工業プロセスで使用される水の脱色・脱臭、有機物の除去に適しています。
  • 水処理プラント:水処理施設での前処理や仕上げ処理に利用されます。
  • 製造業:食品、化学、電子部品などの製造工程での水質管理に貢献します。

仕様

項目 仕様
活性炭重量 100g
耐熱温度 70℃以下
外径 65mm
内径 30mm
長さ 250mm
材質 パッキン:発泡ポリエチレン
コア:ポリプロピレン
不織布:ポリエチレン
質量 225g

ZAC-SZSは、工業用水の品質向上に貢献する高性能な活性炭フィルターです。その優れた吸着性能と構造により、さまざまな産業分野での水処理ニーズに対応します。詳細な情報や導入に関するご相談は、ゼット工業株式会社までお問い合わせください。

日本ポールのカーボンフィルター:高効率な活性炭処理ソリューション

日本ポール株式会社(Pall Corporation)は、食品・飲料業界をはじめとする多様な産業分野において、高性能なろ過技術を提供しています。特に、活性炭処理に関しては、従来のバルク粉末活性炭(PAC)に代わる、効率的で操作性に優れたソリューションを展開しています。

活性炭処理の課題と日本ポールのアプローチ

従来のバルクPACを用いた処理では、以下のような課題が存在しました:

  • バルク粉末の取り扱いや混合に手間がかかる
  • 処理後の製品からのPACの除去に追加のろ過ステップが必要
  • プロセス機器の洗浄に労力がかかる

これらの課題を解決するために、日本ポールは「Seitz® AKS」シリーズなどの固定化カーボンフィルターメディアを開発しました。これらのフィルターは、セルロース系繊維のマトリックスに活性炭を組み込むことで、バルクPACよりも高い吸着効率を実現し、プロセス時間の短縮と製品の歩留まり向上に寄与します。

固定化カーボンフィルターの利点

  • 高い吸着効率:プロセス流体がシートマトリックスに固定化された炭素粒子と効率的に接触するため、吸着効率が向上します。
  • プロセスの簡素化:バルクPACの取り扱いや除去、機器の洗浄などの手間が省け、全体のプロセスが簡素化されます。
  • 環境への配慮:プラスチック製のハードウェアを減らし、すすぎや洗浄に必要な水やアルコールを削減することで、環境保護プログラムに沿った持続可能な低廃棄物ソリューションを提供します。

主な用途

日本ポールのカーボンフィルターは、以下のような用途で活用されています:

  • 蒸留酒の色や香り、風味の調整
  • 食品・飲料業界での一般的な活性炭吸着処理
  • 製品の品質向上とプロセスの効率化

まとめ

日本ポールのカーボンフィルターは、従来のバルクPACに代わる高効率な活性炭処理ソリューションとして、多くの産業分野で採用されています。その高い吸着効率とプロセスの簡素化、環境への配慮により、製品の品質向上と生産性の向上に寄与しています。

セントラルフィルターのステムフィルター:高性能カートリッジフィルターの特長と用途

セントラルフィルター工業株式会社が提供する「ステムフィルター」は、液体および気体のろ過に対応した高性能なカートリッジフィルターです。この製品は、化学、食品、電子部品、医薬品など多岐にわたる産業分野での使用を想定して設計されており、さまざまなろ過ニーズに対応可能です。

主な特長

  • 高いろ過精度:微細な粒子の除去が可能で、製品の品質向上に貢献します。
  • 耐薬品性:多様な薬品に対して高い耐性を持ち、幅広いプロセスでの使用が可能です。
  • 長寿命設計:フィルターの交換頻度を低減し、メンテナンスコストの削減に寄与します。
  • 多様なサイズ展開:異なる流量や設備に対応するため、さまざまなサイズが用意されています。

主な用途

  • 化学工業:薬品の精製や不純物の除去に使用されます。
  • 食品・飲料業界:製品の安全性と品質を確保するためのろ過に利用されます。
  • 電子部品製造:高純度な液体の供給を必要とするプロセスで活躍します。
  • 医薬品製造:無菌環境の維持や製品の純度確保に貢献します。

ステムフィルターは、その高い性能と信頼性から、多くの産業分野で採用されています。詳細な仕様や導入に関するご相談は、セントラルフィルター工業株式会社までお問い合わせください。

ダイワボウのFMHシリーズ:高性能フィルターメディアの特長と用途

ダイワボウ工業株式会社が提供する「FMHシリーズ」は、産業用液体ろ過において高い性能を発揮するフィルターメディアです。このシリーズは、特に高粘度液体や微細粒子の除去が求められるプロセスに適しており、化学工業、食品・飲料業界、電子部品製造など、さまざまな分野で活用されています。

主な特長

  • 高いろ過精度:微細な粒子の除去が可能で、製品の品質向上に寄与します。
  • 優れた耐薬品性:多様な薬品に対して高い耐性を持ち、幅広いプロセスでの使用が可能です。
  • 高い流量特性:高粘度液体でもスムーズな流れを維持し、効率的なろ過を実現します。
  • 長寿命設計:フィルターの交換頻度を低減し、メンテナンスコストの削減に貢献します。

主な用途

  • 化学工業:薬品の精製や不純物の除去に使用されます。
  • 食品・飲料業界:製品の安全性と品質を確保するためのろ過に利用されます。
  • 電子部品製造:高純度な液体の供給を必要とするプロセスで活躍します。
  • 医薬品製造:無菌環境の維持や製品の純度確保に貢献します。

FMHシリーズは、その高い性能と信頼性から、多くの産業分野で採用されています。詳細な仕様や導入に関するご相談は、ダイワボウ工業株式会社までお問い合わせください。

JNCのステムフィルター:高性能活性炭カートリッジフィルターの特長と用途

JNCフィルター株式会社が提供する「ステムフィルター」は、活性炭を用いた高性能なカートリッジフィルターです。この製品は、液体中の不純物や臭気成分の除去に優れており、化学工業、食品・飲料業界、電子部品製造など、さまざまな分野で活用されています。

主な特長

  • 高い吸着性能:ヤシ殻活性炭を使用し、水蒸気賦活法により高い吸着性を実現しています。
  • 多層構造による高効率ろ過:一次ろ層にポリオレフィン系複合繊維(ES繊維)、吸着層に固化成型した活性炭、二次ろ層にCPフィルターを採用し、効率的なろ過を実現しています。
  • 低圧損・高流量:少ない圧力損失で大きなろ過流量を確保し、効率的な運用が可能です。
  • 長寿命設計:ろ過流体の抵抗による破砕や消耗、移動がなく、長期間の使用が可能です。
  • 安全性への配慮:使用素材は食品衛生法の規格限度内に適合したものを採用し、安全性を確保しています。

主な用途

  • 化学工業:薬品の精製や不純物の除去に使用されます。
  • 食品・飲料業界:製品の安全性と品質を確保するためのろ過に利用されます。
  • 電子部品製造:高純度な液体の供給を必要とするプロセスで活躍します。
  • 医薬品製造:無菌環境の維持や製品の純度確保に貢献します。

仕様

長さ 梱包単位
250mm 20本/ケース
500mm 12本/ケース
750mm 6本/ケース

ステムフィルターは、その高い性能と信頼性から、多くの産業分野で採用されています。詳細な仕様や導入に関するご相談は、JNCフィルター株式会社までお問い合わせください。

用途別おすすめの選定ポイント

  • 高精度・高寿命を求める: ロキテクノ、JNC、ポール
  • コストを重視する: ゼット工業、ダイワボウ
  • 脱臭や油分除去をしたい: セントラルフィルター、JNC
  • 食品や飲料用途: 日本ポール、ロキテクノ、ダイワボウ

まとめ

工業用活性炭カートリッジの選定においては、「吸着性能」「ろ過精度」「コスト」「用途の適合性」をトータルで判断することが大切です。本記事で紹介した各メーカーの製品には、それぞれ強みがあります。導入予定のラインや目的に応じて、最適なカートリッジを選定することが、ろ過効率の向上や維持コスト削減につながります。

気になる製品があれば、ぜひメーカーや販売代理店にサンプルや仕様書を依頼して、実際の運用条件に適合するかを確認することをおすすめします。

以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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