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【井戸の注目度が高まっている⁉】補助金を利用して価格を抑えて井戸を掘る

井戸水は非常時の水源として有効であり、日常生活でも節水や災害対策の一環として利用されるケースが増えています。しかし、「自然の水だから安心」と思っている方は要注意です。実は井戸水には、細菌や化学物質、重金属など、さまざまなリスクが潜んでいる可能性があります。

とくに飲用として使用する場合、水質の安全性を確認せずに使用すると、健康被害の原因となるおそれがあります。

ここでは、井戸水の主な水質リスクと、それに対する具体的な対策について詳しく解説します。

■この記事を書いた人■
元水処理・フィルターメーカーの営業マン。15年間の勤務経験を活かし、ろ過や水処理について情報を発信中。現在は、フリーで工場のろ過、水処理のコンサルタントを行っている。一男一女の父。46歳。

 

災害時の“最後の水源”として井戸の注目度が高まっている

地震や台風などの自然災害が頻発する中、ライフラインの一つである「水」の確保がますます重要視されています。

特に断水時には、飲み水や生活用水を確保することが困難になり、多くの人が不自由な生活を強いられます。

そんな中、近年注目を集めているのが「井戸水」です。かつての生活用水の中心だった井戸が、今ふたたび“最後の水源”として見直されています。

災害時に水道が使えなくなるリスク

大規模な地震や台風、洪水などが発生すると、水道管の破損や浄水場の停止により、広範囲で断水が発生します。実際に、2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震でも、数十万世帯が断水し、水の供給に多大な影響が出ました。

その際、ペットボトルの水や給水車に頼らざるを得ない状況が続きましたが、それにも限界があります。そうした背景から、井戸の存在が改めてクローズアップされているのです。

井戸水を飲用に使う場合の水質基準と検査項目

井戸水を飲み水として利用する場合、厚生労働省が定める「水質基準51項目」をクリアする必要があります。

地域の保健所や民間検査機関で水質検査が可能です(費用は1〜3万円程度)。

井戸が「最後の水源」として注目される理由

  • 独立した水源:公共インフラに依存せず、自力で水を確保できる。
  • 持続性が高い:電気が止まっても手動ポンプなら汲み上げ可能。
  • 断水時でも使用可:他の水源が途絶えても、生活用水として使用できる。
  • 地域での活用:自治体や学校が「災害井戸」として登録・整備を進めている。

実際の活用事例

東京都や神奈川県では、公園や学校、マンションの敷地内にある井戸を「災害対応井戸」として登録し、災害時に地域住民が利用できる体制を整えています。自治体のWebサイトでは、災害用井戸マップを公開しているところもあり、自宅周辺での水源確認が可能です。

井戸の課題と必要な対策

一方で、井戸には注意すべき点もあります。長期間使われていない井戸は衛生面でのリスクがあり、飲用には不適切な場合も。また、地震の影響で水質が急変することもあるため、以下の対策が重要です。

  • 定期的な水質検査の実施
  • 非常時に備えた手動ポンプの設置
  • 浄水器や煮沸などの併用

井戸水にはどんな水質リスクがある?

井戸水は非常時の重要な水源ですが、「安全=飲める水」とは限りません。特に掘ってから年数が経過している井戸や、メンテナンスされていない井戸では、さまざまなリスクが存在します。

リスク要因 内容 対策
細菌・大腸菌群の混入 動物の糞尿や表層水の混入により細菌が検出される場合がある 年1回以上の水質検査/煮沸や浄水器の使用
硝酸性窒素亜硝酸性窒素 農地に近い地域での地下水汚染。特に乳幼児に有害 定期的な検査/深井戸の利用/飲用は控える
鉄・マンガン 金属臭や濁り、水道配管の赤錆の原因にも ろ過装置や酸化沈殿による処理が必要
ヒ素・鉛などの重金属 特定地域で自然に含まれるケースも。発がん性の懸念 掘削前に周辺地質調査/専門機関による検査
化学物質(PFASなど) 工場跡地・米軍基地周辺ではPFASなどの化学物質検出例も RO膜や活性炭による浄水/公的データの確認

井戸水は「飲用」として使用する場合、必ず水質検査(飲用井戸は51項目)を受けることが強く推奨されています。飲料水としての利用には十分な対策が必要ですが、トイレや洗濯、庭の散水などの「生活用水」としては非常に有効です。

地域によっては、保健所や自治体が水質検査の補助を行っている場合もあるので、定期的なチェックを習慣づけましょう。

井戸を掘るにはいくらかかる?──費用の目安

井戸を新設する場合、費用は井戸の種類や地質、深さ、設置場所によって大きく変動します。以下は一般的な目安としての費用相場です。

井戸の種類 掘削深さ 主な用途 費用目安(税込) 特徴
浅井戸(手押しポンプ) ~10m程度 庭の散水・非常用 20万~50万円 比較的低コスト。地表水に影響を受けやすい。
深井戸(電動ポンプ) 20~100m 生活用水・飲料水 70万~150万円以上 安定した水量と水質。水質検査が必要。
家庭用ボーリング井戸 30~60m 災害時対応・灌漑 100万~200万円 工事日数と費用がかかるが信頼性は高い。

設置の際には「地盤調査」や「水質検査」の費用(別途1万~3万円程度)が加算される場合があります。また、電動ポンプや貯水タンクの導入を行うと追加で10万円以上の設備費が発生することもあるため、用途と予算に応じて選定しましょう。

なお、各自治体によっては「災害対策井戸設置補助金制度」などを設けているケースもありますので、お住まいの市区町村に事前確認するのがおすすめです。

井戸の定期メンテナンスと注意点

井戸は設置したまま放置していると、以下のようなトラブルを引き起こす可能性があります。

  • ポンプの故障・電源トラブル
  • 水位低下や枯渇
  • 井戸内のスライムや異臭・藻の発生
  • 地震後の水質悪化(濁りや鉄分の増加)

最低でも年1回の「水質検査」と、「設備点検」「井戸内洗浄」を定期的に行うことが、安全に使用するポイントです。

井戸設置に関する補助金制度一覧(都道府県・市区町村別)

自治体名 補助金制度名 主な内容 公式リンク
東京都 災害時協力井戸工事等助成金 災害時に使用可能な井戸の設置・改修費用の一部を補助(上限25万円) 詳細を見る
高知県 飲用井戸等整備事業費補助金 飲用井戸の新設・改修に対する補助制度 詳細を見る
長崎県 農業用井戸掘削事業補助金 農業用井戸の掘削に対する補助制度 詳細を見る
岐阜市岐阜県 災害用井戸施策実態調査結果 災害用井戸の設置・維持に関する補助制度 詳細を見る
その他自治 災害用井戸制度導入ガイドライン 災害時に使用可能な井戸の設置・改修費用の一部を補助(上限25万円) 詳細を見る

家庭用井戸の新設や復活も検討される時代に

最近では、個人宅でも浅井戸や雨水利用システムを導入する動きが広がっています。井戸は初期費用こそかかりますが、長期的には非常に有用なライフライン補完装置となり得ます。特に、家庭菜園や庭の散水、災害時のトイレ用水など多用途に使える点も魅力です。

井戸のある生活は「安心」の一つのかたち

災害時の備えとして、食料や電源の確保に加えて「水の自立」が求められる時代です。井戸は、かつての生活水準を支えた水源でありながら、現代においてもその価値が失われていません。もしもの時の“最後の水源”として、井戸の存在を今一度見直してみてはいかがでしょうか。

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