ろ過マイスター

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純水装置のシリカリーク対策完全ガイド|原因・影響・防止策を徹底解説

純水装置は、医療・半導体・化学・食品業界など、精密な水質が求められる分野で不可欠な設備です。

中でも「シリカ(SiO₂)」の管理は極めて重要で、微量のリークでも製品品質や装置寿命に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

一見安定して稼働しているように見える純水装置でも、再生不良や運転条件の変化により突然「シリカリーク」が発生することがあります。

本記事では、シリカリークによって発生する問題点から、その原因、そして実際に効果的とされている防止策まで、技術的観点から詳しく解説していきます。

■この記事を書いた人■
元水処理・フィルターメーカーの営業マン。15年間の勤務経験を活かし、ろ過や水処理について情報を発信中。現在は、フリーで工場のろ過、水処理のコンサルタントを行っている。一男一女の父。46歳。

 

シリカリークによって発生する問題

シリカが純水中に漏れ出す(リーク)ことで、以下のような問題が発生します。

シリカリークによって発生する問題点一覧

用途・分野 問題内容 影響
半導体製造 ウエハー表面への微粒子付着 歩留まり低下、品質不良
ボイラー・蒸気機器 シリカスケールの形成 熱交換効率の低下、燃費悪化
分析・研究機器 バックグラウンドノイズの上昇 測定値の誤差、再現性の低下
製薬・医療用水 基準外成分の混入 GMP違反、製品回収リスク
精密洗浄工程 ガラス状残留物が表面に残る 外観不良・汚染トラブル

なぜシリカはリークするのか

純水装置でシリカがリークする主な原因は、イオン交換樹脂の特性にあります。以下に代表的な要因を挙げます。

  • イオン交換樹脂の飽和:陰イオン交換樹脂がシリカを吸着しきれず、リークする。
  • 再生不良:苛性ソーダなどの再生液で十分にシリカを脱着できていない。
  • 急激な水質変化:樹脂層の流速やpH変化により、樹脂が保持していたシリカが一気に流出する「バースト現象」。
  • 樹脂層の偏流:チャネリング(流路の偏り)によって処理不十分な水がそのまま通過。

普通に純水装置を稼働させていてもリークしてしまうのがシリカです。

シリカリークを防ぐ方法

シリカリークの対策には、装置設計・運用の両面からのアプローチが必要です。

対策方法 具体的内容 効果
加温再生 再生液(NaOH)を40~50℃に加温し、シリカの脱着効率を向上 再生率向上、残留シリカの低減
段階通水停止 導電率やpH変化をモニターし、急変時に通水を自動停止 バースト現象の回避
マルチレイヤ構造 陽イオン樹脂-ミキシドベッド-陰イオン樹脂と段階配置 処理水の安定化、バッファ作用の強化
RO+EDI方式の導入 逆浸透膜シリカを物理除去、EDIで微量除去 除去効率99%以上、運転安定性も高い

すでにイオン交換式の純水装置をご利用であれば、まずは設備改造が不要な「段階通水停止」を試してみてください。

具体的には管理方法の変更で

  • 導電率の設定値を変更する(例えば1μS/㎝で管理していたら、その数値を0.5μS/㎝にする)
  • 純水のpH値を管理する(pHが酸性によってきたらシリカリークの可能性あり)

これなら費用をかけずに対策することができます。

メンテナンスの重要性

定期的な樹脂の交換、再生処理の温度・濃度・時間の管理、圧力・流量監視の実施も不可欠です。

また、シリカのリアルタイムモニタリング装置を導入することで、突発的なリークにも迅速に対応できます。

コストを抑えるならパックテストで定期的に確認するだけでも良いです。

シリカリークをモニタリングする方法一覧

モニタリング方法 概要 特徴・利点
オンラインシリカ計(連続測定型) 装置出口に設置し、ppmppbレベルのシリカ濃度をリアルタイムで監視 高感度・高精度。自動記録で突発的リークに即時対応可能
定期サンプリング+分析 定期的に水を採取し、比色法やICPなどでシリカ濃度を測定 初期投資が少ないが、リアルタイム性は低い
導電率・pH連動監視 樹脂槽出口で導電率・pHの急変をトリガーに異常を検知 間接的検知だが安価で即時性あり。バースト対策に有効
差分監視(入口/出口比較) 入口と出口の水質データを比較し、異常増加を検出 多段処理装置での漏洩発生源特定に有効

シリカリークの対策 まとめ

シリカリークは、製品の品質や設備の寿命に直結する深刻な問題です。

装置構成や運用管理の最適化により、そのリスクは大幅に低減可能です。特に再生条件の見直しやEDI方式への更新は、将来的なメンテナンスコスト削減にも寄与します。シリカ対策を怠らず、安定した純水供給を維持しましょう。

参考:シリカリークの少ない純水装置

シリカリークの少ない純水装置の種類と特徴

方式 概要 シリカ除去性能 主な用途
RO+EDI方式 逆浸透膜(RO)でシリカ機械的に除去し、EDIで微量イオンを連続除去 非常に高い(除去率 98〜99%以上) 半導体、医薬品製造、理化学研究
2段RO(ダブルパスRO) RO膜を2段構成にすることで、1段では除去しきれないシリカも減少 高い(95〜98%) 電子材料、精密洗浄、分析前処理
混床式イオン交換(MB)+加温再生 陽・陰イオン樹脂を混合し、NaOH再生を加温してシリカの脱着効率を向上 中〜高(再生条件に依存) ラボ、旧型装置のアップグレード
UF+RO+EDIハイブリッド 超ろ過(UF)で微粒子除去後、ROとEDIで有機物・シリカを徹底除去 非常に高い(99%以上) 超純水装置(16〜18MΩ・cm)用途
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