切削油(クーラント)は、金属加工の現場で潤滑・冷却・洗浄の役割を果たす重要な液体です。しかし使用を重ねるごとに金属粉や切りくず、バクテリアなどの不純物が混入し、油の性能が低下します。
これを防ぐために「ろ過処理」は欠かせない工程です。本記事では、切削油のろ過の重要性、方法、機器の種類、そして効果について詳しく解説します。
■この記事を書いた人■
元水処理・フィルターメーカーの営業マン。15年間の勤務経験を活かし、ろ過や水処理について情報を発信中。現在は、フリーで工場のろ過、水処理のコンサルタントを行っている。一男一女の父。46歳。
切削油の劣化とろ過の必要性
切削油の主な汚染要因
- 切りくず(スラッジ)
- 金属粉
- バクテリア・カビ
- 浮遊油(トランポ油や機械油)
- 水質の変化によるpH低下
汚れた切削油を使い続けると、工具寿命の短縮、加工精度の低下、異臭の発生、腐敗による健康被害、機械のトラブルなど様々な問題を引き起こします。これらを防ぐために、適切なろ過処理と管理が求められます。
ろ過の方式と装置の種類
切削油のろ過には、目的や油の種類、加工機の構成に応じて様々な方式が用いられます。
主なろ過方式
方式 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|
重力ろ過 | フィルターで自然落下する油をろ過 | 小型装置・汎用加工機 |
加圧ろ過 | ポンプ圧でフィルターを通す | 高精度加工・自動化ライン |
遠心分離 | 遠心力でスラッジと液体を分離 | スラッジが多い現場 |
磁力分離 | 磁性体(金属粉)を磁石で除去 | 鉄系の加工に効果的 |
浮上油除去(スキマー) | 油膜を回転ドラムやベルトで除去 | 浮遊油の分離に特化 |
ろ過装置の選定ポイント
- 切削油の種類(エマルジョン/全合成/不水溶性)
- 加工材(鉄、アルミ、ステンレスなど)
- スラッジの量・性質
- 必要とされるろ過精度(例:20ミクロン以下)
- 処理能力と設置スペース
ろ過による効果とメリット
数値で見るろ過効果(例)
導入前 | 導入後 | 改善率 |
---|---|---|
切削油の交換周期:2週間 | 4~6週間 | 200%~300%向上 |
工具寿命:約1000カット | 1400~1600カット | 40~60%延長 |
機械の故障件数:月3件 | 月1件未満 | 約70%削減 |
定性的な効果
- 油の悪臭や腐敗の防止
- バクテリアの繁殖抑制
- 製品の寸法安定性の向上
- 加工面の光沢・精度向上
- 環境対策(廃液量の低減)
ろ過とメンテナンスの重要性
ろ過装置の効果を最大限にするには、定期的なメンテナンスも欠かせません。フィルターの交換時期を守る、装置内のスラッジを清掃するなどの手入れが、長期的な効果とトラブルの回避につながります。
会社によっては日々のメンテナンスができていなくてトラブルになるケースも少なくありません。ろ過装置を導入する際は、メンテナンスの頻度なども選定基準に入れておいた方が良いですね。
まとめ
切削油のろ過は、単に「きれいにする」だけでなく、加工品質・コスト・環境負荷すべてに関わる重要な要素です。加工現場に適したろ過方式と装置を選定し、適切に管理・運用することで、設備の寿命延長と利益向上が期待できます。
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