クーリングタワー(冷却塔)は、冷却水を外気にさらして熱を放出し、空調設備や工場の熱源を冷却する装置です。
循環型のため、冷却水は何度も再利用されますが、その過程で不純物やスケールの原因となる粒子が蓄積します。
これらをろ過しないと、配管・熱交換器の詰まり、冷却効率の低下、細菌の繁殖によるレジオネラリスクなどの問題が発生します。
■この記事を書いた人■
元水処理・フィルターメーカーの営業マン。15年間の勤務経験を活かし、ろ過や水処理について情報を発信中。現在は、フリーで工場のろ過、水処理のコンサルタントを行っている。一男一女の父。46歳。
循環水中に混入する主な汚染物質
汚染物質 | 原因 | 影響 |
---|---|---|
砂・土・粉塵 | 空気中の吸い込み・建屋の外気 | 熱交換器詰まり・スケール形成 |
藻類・微生物 | 湿度と日光による繁殖 | バイオフィルム形成・腐敗臭・衛生リスク |
油分 | 工場設備や空調の漏洩 | 水質悪化・浮遊物の付着促進 |
ろ過のメリットと導入の効果
- 冷却効率の維持(熱交換器が詰まりにくくなる)
- 水の延命と補給水削減(処理水の再利用)
- スケール・スライムの抑制(薬剤使用量の削減)
- レジオネラ属菌のリスク低減(バイオフィルム防止)
- 機器トラブル防止(チラー・ポンプの長寿命化)
クーリングタワーに適したろ過方式
ろ過装置の主なタイプと特徴
方式 | 特徴 | 用途例 |
---|---|---|
バッグフィルター | 高精度ろ過が可能。メンテナンスは定期交換 | 中規模冷却水ライン |
サンドフィルター(多層ろ過) | ろ材(砂・砕石)を使い、物理的に懸濁物を除去 | 工場・大規模空調の循環系 |
スクリーンフィルター | 粗ろ過向き。設置が容易で大流量対応 | プレフィルター、1次ろ過用 |
自己洗浄式フィルター | 差圧感知で自動洗浄。メンテナンス頻度が低い | メンテ人員が限られる現場 |
ろ過精度と用途の目安
ろ過精度(μm) | 対応粒子 | 用途 |
---|---|---|
100〜200 | 大粒の砂・落葉 | プレフィルター |
50〜100 | 細かな粉塵・藻類 | 二次ろ過(サンド・スクリーン) |
10〜50 | 微粒子・バイオスライム | 精密ろ過(バッグ式等) |
ろ過装置の設置ポイント
設計・選定時に考慮すべき事項
- 循環水量(m³/h):ろ過能力を選定する基準
- 設置スペース:屋外でも設置できる筐体が理想
- 水質:濁度・SS(浮遊物質)・細菌負荷を考慮
- メンテナンス頻度:交換部品・バックフラッシュ有無
- 電源の有無:自己洗浄式か手動式かを決定
導入効果と運用コストの考察
費用対効果の例
導入目的 | 改善内容 | 経済効果 |
---|---|---|
スケール抑制 | 熱交換器の清掃回数が年4回 → 年1回に減少 | 年間数十万円のメンテコスト削減 |
水の延命 | 補給水量が30%削減、排水処理費も低下 | 年間100〜200万円のランニングコスト減 |
トラブル防止 | チラーの異常停止が激減 | 生産停止リスクの回避 |
まとめ:冷却水ろ過はトータルコストの最適化に直結
クーリングタワーのろ過は単なる水質維持ではなく、設備保全、エネルギー効率、労務コストの最適化に直結する重要な管理手段です。特に気候変動や水資源コストの高騰が進む現在、ろ過技術の導入は「未来の経費削減策」とも言えます。
これからろ過装置を導入する方は、現場の水質・水量・運転体制を踏まえ、適切なフィルター方式を選定することが成功の鍵となるでしょう。
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